新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、生活が大きく変化した人は多いでしょう。
その中で、仕事を失ったり仕事量が激減したりしたため、経済的に困窮しているという人も少なくありません。
今回は、そういった方を支援するための、生活福祉資金貸付制度について解説します。
生活福祉貸付制度とは
生活に困窮する世帯を対象に、生活資金を貸し付けることを目的としているのが、生活福祉資金貸付制度です。
対象となる世帯は、下記の表のとおりです。
低所得者世帯 | 市町村民税が非課税で、他から必要な資金を借りることが難しい世帯 |
高齢者世帯 | 65歳以上の高齢者が属している世帯 |
障害者世帯 | 身体障害者手帳、精神障碍者保健福祉手帳、療育手帳を交付されている人が属している世帯 |
生活福祉資金は、その用途に応じて大きく3つに分けられます。
そして、その中でさらにいくつかに分けられています。
それによって、貸付限度額も異なっているので、注意してください。
生活福祉資金の種類
生活福祉資金は、大きくこのように分けられています。

この中で、さらにいくつかの種類に分かれていくのです。
総合支援資金の種類
総合支援資金は、下の表のような種類に分けられます。
資金の種類 | 用途 | 貸付限度額 |
生活支援費 | 収入の減少や失業に伴って、生活が困窮して日常生活が困難な場合に、生活を再建するまでの間に必要な生活資金 | 単身:月15万円以内 2人以上:月20万円以内 ・貸付期間は原則3月(最長12月) |
住宅入居費 | 住宅の賃貸契約をするために必要な、敷金・礼金などの資金 | 40万円以内 |
一時生活再建費 | 就職等に必要な技能習得の費用や、公共料金の滞納分の立て替え費用、債務整理に必要な費用など、生活の再建に必要であり日常生活費から出すのが難しい費用 | 60万円以内 |
総合支援資金は、保証人が原則必要です。
ただし、保証人がなくても貸付は可能なのです。
では、なぜ原則必要になるかというと、貸付利子が異なってくるからです。
保証人があれば、無利子で資金を借りられます。
しかし、保証人がない場合は、年1.5%の利子が付くのです。
生活に困窮して借りる費用ですから、わずかな利子でもないほうがいいでしょう。
福祉資金の種類
福祉資金は、以下の表のような種類に分けられます。
資金の種類 | 用途 | 貸付限度額 |
福祉費 | ・生業を営むための費用 ・福祉用具の購入費用 ・技能習得の費用やその期間の生計費 ・怪我や病気の際の療養費、およびその期間の生計費 ・住宅の増改築や補修費、公営住宅を譲り受けるための費用 ・障碍者用の車両購入費用 ・介護サービス、並びに障害者サービスを受ける費用、およびその期間の生計費 ・災害によって必要となった臨時の費用 ・中国残留邦人等によって、国民年金保険料の追納が必要な際の費用 ・冠婚葬祭に必要な費用 ・引っ越しなどで、給排水設備等を設置する必要がある際の費用 ・就職、技能習得に必要な費用 | 580万円以内 ※用途に応じて、別途上限目安額が設定 |
緊急小口資金 | 緊急、および一時的に整形の維持が困難となったときに借りられる、少額費用 | 10万円以内 |
福祉費の用途は、多岐にわたります。
他の資金でも同一の用途があるのですが、福祉費のほうが金額は大きくなっています。
多額の資金が必要な場合に、こちらを利用することになるでしょう。
福祉費は、貸付日から6か月以内が据置期間で、償還期限はそこから20年以内です。
総合支援資金と同じく、保証人が原則必要ですが、なくても借りることはできます。
保証人ありなら無利子ですが、保証人なしなら年1.5%の利子がつきます。
緊急小口資金については、コロナウイルスの影響による特例貸付があります。
通常の貸し付けも含め、詳しい内容については後述します。
教育支援資金の種類
教育支援資金は、以下の表のような種類に分けられます。
資金の種類 | 用途 | 貸付限度額 |
教育支援費 | 低所得世帯の人が、高校や大学、高等専門学校に修学するための費用 | 高校:月3.5万円以内 高専:月6万円以内 短大:月6万円以内 大学:月6.5万円以内 ※必要と認められた場合、上記の1.5倍まで貸付可能 |
就学支度費 | 低所得世帯の人が、高校や大学、高等専門学校に入学するための費用 | 50万円以内 |
教育支援資金は、入学費用と就学費用の2つに分けられています。
いずれも、卒業するまで借りることが可能で、卒業後6月は据置期間です。
その後、20年が償還期限となっています。
無利子で、保証人も必要ありません。
ただし、世帯内で連帯借受人が必要です。
不動産担保型生活資金の種類
不動産担保型生活資金の種類は、以下の表のとおりです。
資金の種類 | 用途 | 貸付限度額 |
不動産担保型生活資金 | 高齢者の低所得世帯を対象として、居住用不動産を担保にした生活資金の貸付 | ・土地の評価額の70%程度 ・月30万円以内 |
要保護世帯向け不動産担保型貸付資金 | 高齢者の要保護世帯を対象として、居住用不動産を担保にした生活資金の貸付 | ・土地と建物の評価額の70%程度(集合住宅は50%) ・生活扶助額の1.5倍以内 |
今住んでいる家を担保にして、生活資金を借りることができる制度です。
対象は高齢者世帯ですが、低所得か生活保護を受けていることが条件です。
生活保護の場合は保証人が不要ですが、低所得の場合は推定相続人の誰かが保証人にならなくてはいけません。
貸付期間は、借りる人が死亡するか貸付元利金が限度額に達するまでの期間です。
利子は、年3%を上限として長期プライムレートと同じ金利です。
借りている間も、担保となった家にはそのまま住み続けることができます。
緊急小口資金について
新型コロナウイルスの影響で、生活福祉資金にはいくつかの変更や特例が設けられました。
その中でも、特に緊急小口資金に関しては、特例が設けられ利用者の幅が広がっています。
緊急小口資金の特例について
緊急小口資金の特例貸付について、その変更点を解説します。
通常と比較して、以下の点が変更されています。
通常 | 特例 | ||
対象世帯 | 低所得世帯等 | → | 新型コロナウイルスの影響により、休業などで収入が減少した世帯 |
貸付上限額 | 10万円以内 | → | 20万円以内 |
据置期間 | 2月以内 | → | 1年以内 |
償還期限 | 12月以内 | 2年以内 |
特例には、コロナウイルスの罹患者が世帯員の中にいるか、要介護者がいる、世帯員が4人以内など、いくつかの条件のうちいずれかが該当すれば、上限額が従来の10万円から20万円に上がります。
つまり、貸付を受けられる対象世帯が拡大し、借りるときの条件も緩くなっているということです。
ただし、新型コロナウイルスの影響で失業した場合は、緊急小口資金よりも総合支援資金の中の生活支援費の利用対象となるでしょう。
生活支援費の特例について
生活支援費は、以下の点が変更されています。
通常 | 特例 | ||
対象世帯 | 低所得世帯 | → | 新型コロナウイルスの影響で、失業もしくは収入が減少した世帯 |
据置期間 | 6月以内 | → | 1年以内 |
貸付利子・保証人 | 保証人ありの場合無利子、保証人なしなら年1.5% | → | 保証人の有無に関わらず無利子なので、保証人は不要 |
こちらでは、緊急小口資金と同じく対象となる世帯、および据置期間が変更されています。
また、それに加えて保証人は不要となり、どの場合でも無利子で借りることができます。
また、特例措置全判で、償還時に所得の減少が続いている住民税非課税世帯については、償還を免除することもできます。
条件に該当する人は、必要があれば積極的に利用しましょう。
まとめ
新型コロナウイルスの影響で、収入を大きく減らした人が増えています。
そのため、これまでは生活福祉資金を知らなかった人でも、利用することが増えているでしょう。
申込は、各地域の社会福祉協議会が窓口となっています。
不安がある方は、相談だけでもしてみてはいかがでしょうか。