新型コロナウイルスは、今もなお世界中で感染者が増えています。
また、コロナショックによって失業する人も増える一方です。
そんな中、いま世界中で注目されている制度として、ベーシックインカムがあります。
日本でも導入間近という噂があるのですが、果たしてどのような制度なのでしょうか?
ベーシックインカムとは?
新型コロナウイルスの影響で、国民の生活には様々な影響が出ています。
仕事にも影響が出て、収入が減ったり、失業してしまったりする人もいます。
その中で、今注目されているのがベーシックインカムという制度です。
これは社会保障システムの一環で、すべての国民に対して政府が無条件で、生活に最小限必要な金額を給付する、という制度です。
世界各地でその制度の必要性が議論されていて、すでに社会実験を検討しているところもあります。
日本でも、それに近いものとして以前、特別定額給付金として全国民に一律10万円を支給しました。
ベーシックインカムは、簡単に言うとそれを継続して毎月支給する、というものです。
この制度の狙いは、各家庭の生活水準の底上げです。
一時的に支給するのではなく、継続して支給することですべての家庭の生活水準を底上げし、貧困世帯をなくするというのが狙いです。
日本では、失業した人には失業手当があり、生活に困窮した人には生活保護制度があります。
ただし、これをすべての人が受け取れるのかといえば、答えはノーです。
失業保険は、受給できる日数が限られています。
失業した理由や再就職できない事情などは人によって異なるでしょうが、給付日数が過ぎればあとは収入が途絶えてしまいます。
生活保護についても、まずは親族からの援助について調査が必要であり、どうしても無理という場合にだけ受給できます。
さらに、毎月収入をチェックされ、仕事ができない人にも再就職するよう求めるなど、条件はかなり厳しいところがあります。
さらに、以前騒がれた水際作戦のように、どうにかして生活保護を受給しない道を探させようとする、現場職員の妨害もあります。
支給要件を満たしていても、嫌気がさして取りやめた人もいるのではないでしょうか?
こういった理由から、いざというときのセーフティーネットとしては不十分といえるのです。
そもそも、日本の経済というのは成長を続けることを前提として考えられています。
成長が滞りつつある現在では、行き詰まり感があるのです。
そのせいで、賃金が低水準になってしまったり、生活苦に陥る家庭が増えたりしていることも否めません。
その不足している賃金を保管するという意味でも、ベーシックインカムの導入が求められています。
きっかけとなったのは今回のコロナショックによる失業、および賃金の減少ですが、元々は将来のAI導入による大量失業を想定して考えられていました。
今後、AIのできることが増えていくにつれて、人間の仕事が減少し、大量の失業者が出るのではないか、という想定から、その対策として導入が検討されていたのです。
各国の状況は?
現在、世界中でベーシックインカムや、それに近い制度の導入を検討されています。
すでに導入されている国はあるのでしょうか?
各国の状況について、見てみましょう。
イギリスでは、従業員が解雇されるのを防ぐために、企業に対して賃金の8割を支援する制度がすでに導入されています。
これによって、企業が休業している間も最低限の賃金が保障されるようになっています。
スペインでは、貧困世帯を対象として、最低限の所得を保障する制度が導入されています。
所得が一定水準を下回る家庭に対して、収入との差額分を支給するという制度です。
また、フィンランドでは以前から、失業者2000人を対象として毎月約7万円を支給するという社会実験を2年間にわたり行っていて、その最終報告書が取りまとめられています。
その報告書も、各国の参考になるでしょう。
ローマ教皇も、ベーシックインカムの導入について検討するべきとの声明を出しており、アイルランドやドイツでは試験的導入の社会実験を実施することを検討しています。
また、アメリカでも人種間や貧困世帯の経済格差を是正するために導入を求める推進団体が、賛同者を増やしつつ10を超える都市で設立されています。
今や、世界中で導入の機運が高まっているベーシックインカムは、日本でも無視することができないでしょう。
しかし、導入にあたっては高い壁があります。
日本では導入できるのか?
日本では、先ほども述べたように定額給付金として、すでに一時的な全国民への給付を行っています。
そのため、ベーシックインカムを導入するにも敷居は低くなっているのではないかと思われるのですが、いくつかの問題があります。
その一つが、財源の確保です。
以前、10万円を給付したことで、13兆円の予算が必要でした。
もし、これを1年間続けた場合、必要な予算は150兆円を超えてしまいます。
2020年の当初予算は、約102兆円です。
つまり、もし毎月10万円を支給した場合、すべての予算を振り分けても毎年50兆円以上の赤字が積み重なっていくのです。
もちろん、すべての予算をそれに回すのは不可能なので、実際には150兆円以上が毎月積み重なっていくことになるでしょう。
しかし、それを解消するために増税したとしたら、それこそ本末転倒です。
所得税や相続税を増税して、たくさん持っている人から多くもらえばいいという考え方もありますが、その考え方には反発も多くなることが予想されます。
資本主義を掲げている以上、たくさん稼いでいる人からの税金だけを増やすというのは受け入れられず、それこそ経済活動の後退にもつながりかねません。
今でも、所得が多い人からはより多くもらうという税制度を導入しています。
それを増税していくと、どれだけ所得を増やしてもそのうまみが減ってしまうのです。
やりすぎると、所得を増やそうとすること自体が無駄に思えてくるでしょう。
支給額を毎月5万円にしても、年間で80兆円近い支出が増えるのです。
その財源をどこから確保するか、それが明らかにならない限りは導入が難しいでしょう。
遠からず、国家としての財政破綻が起こりかねません。
新型コロナウイルスの影響もあって、今は世界中で即効性のある対策を求められています。
しかし、そのためにはかなり無理をした政策も検討することになり、もしかしたら将来的に取り返しのつかない事態に発展することもありうるでしょう。
今を乗り切らなければ将来はないのですが、将来にあまり重い荷物を残しすぎないように、慎重な検討が必要とされるでしょう。
ただし、スピードも求められる事態なので、今後どう動くかは不透明です。
各国の動きも見定めつつ、日本政府の考えにも注目していきましょう。
まとめ
社会保障制度として、ベーシックインカムというのは非常にシンプルで、効き目が強いものです。
しかし、そのためには多額の財源が必要など、単純に導入できるものではないことも確かです。
今後、様々な角度から検討が続けられ、導入の可否について話し合われるでしょう。
その際は、現在の生活だけにとどまらず、国の未来も見据えて慎重に検討していくこととなります。
今の国民の生活を守りながら、明るい未来を迎えられるような結論は、果たして出るのでしょうか?