平成7年に、生活困窮者自立支援法が施行されました。
その中の制度のひとつとして、住宅確保給付金があります。
これは、どのような制度なのでしょうか?
この制度について、詳しく解説します。
住宅確保給付金とは?
離職などで収入が減少、あるいは途絶えたとき、支出の中でも大きい割合を占める住宅費を支払えなくなることがあります。
そういった人を対象に、住宅を失わないために支払われるのが住宅確保給付金です。
その目的は、安定した住居を確保することが第一なのですが、それだけではありません。
積極的に就労を目指すことも、目的としています。
そのため、就職活動をしていれば支給期間は延長されます。
支給対象者と支給要件
では、どのような人が支給対象者となるのでしょうか?
また、支給要件についても確認しましょう。
支給対象者は、以下の条件に当てはまる人です。

この要件に当てはまれば、支給対象となります。
ただし、支給を受けるにはこれ以外に、収入と資産、就職活動の要件を満たしている必要があります。
その点は、下記の表で紹介します。
収入要件 | 申請した月の世帯収入の合計額が、基準額と家賃額の合計以下であること。ただし、家賃額は住宅扶助特別基準額が上限 |
資産要件 | 申請した時点で、世帯の預貯金額の合計が基準額×6を超えないこと(ただし、上限は100万円) |
就職活動要件 | ハローワークで月2回の職業相談、および自治体で月4回以上面接支援などを受けていること |
主な支給要件は、以上のようになっています。
この中に、基準額というのがありますが、これは地域によって異なります。
この基準額に関しても、東京都1級地を例にとって確認してみましょう。
世帯収入の基準額 | 市町村民税均等割が非課税となる収入の12分の1 |
住宅扶助特別基準額 | 単身世帯:13.8万円 2人世帯:19.4万円 3人世帯:24.1万円 |
預貯金合計の基準額 | 単身世帯:50.4万円 2人世帯:78万円 3人世帯:100万円 |
基準額は、このようになっています。
支給される金額と期間
この支給金は、どのような形で支給されるのでしょうか?
支給される際の、イメージをグラフで見てみましょう。


参照:厚生労働省HP(https://corona-support.mhlw.go.jp/jukyokakuhokyufukin/index.html)
上記のように、家賃額分が支給されるのですが、その際は住宅扶助額が上限です。
また、世帯収入額が基準額を超える場合は、算定方法が変わっているため、支給される金額にも違いが生じています。
算定方法の変更について
新しい算定方法は、令和2年7月分から適用されるものです。
新しくなったことで、どのように変わったのでしょうか?
その違いを、例を挙げながら計算してみましょう。
例① 世帯収入額10万円、基準額8.3万円、家賃額5万円(家賃の上限45,000円)
例② 世帯収入額12万円、基準額8.3万円、家賃額6万円(家賃の上限45,000円)
計算方法 | ||
支給額=家賃額-(月の世帯の収入額-基準額) | 45,000(上限額)-(100,000-83,000)=28,000円 | 45,000-(120,000-83,000)=8,000円 |
支給額=(基準額+家賃額)-世帯収入額 | (83,000+50,000)-100,000=33,000円 | (83,000+60,000)-120,000=23,000円 |
最初に、家賃を上限額で計算するのではなく、家賃をそのまま計算して最後の支給額に上限金額を当てはめる形に変更となりました。
そのため、基本的に支給額はプラスになるよう変更されています。
ちなみに、支給上限額は地域によって異なりますが、東京都特別区の場合はこのようになっています。
支給上限額(東京都特別区) | |||
世帯人数 | 1人 | 2人 | 3人 |
支給上限額(月額) | 53,700円 | 64,000円 | 69,800円 |
支給される期間
支給される期間は、原則3か月です。
しかし、一定の要件を満たしていれば、2回まで延長できるので、最大で9か月間受給することができます。
延長を受けるための要件は、最初の受給要件をすべて維持していることです。
状況に変化がない限り、誠実に求職活動を続けていることが重要な点となります。
どのように支払われるのか?
では、支払われる際はどのような形になるのでしょうか?申請から、支給までの流れを図にしてみたので、見てみましょう。
支払いイメージ

まずは、申請者が生活困窮者自立相談支援機関に相談しなくてはいけません。
相談先の機関は、自治体の直営となっている地域もありますが、社会福祉法人やNPOに委託して運営しているところもあります。
相談して、申請書を作成したら窓口から都道府県や市、区などの担当する自治体へと申請書が送られます。
自治体は、それを見て支給するかどうかの判断を下し、直接あるいは生活困窮者自立相談支援機関を通じて、申請者に決定通知書を送付します。
支給が決定された場合、目安としては2週間ほどで給付されます。
その際は、申請者に支払われるのではなく、自治体から賃貸人や不動産媒介事業者などの支払先に、代理納付という形で支給されます。
図を見てわかるように、申請者が行うのは生活困窮者自立相談支援機関に相談して、申請書を提出するだけです。
あとは、支給が決定するまで待ち、決定されたらその支給期間中は家賃の支払いが免除されることになります。
ただし、家賃が支給限度額を上回る場合は注意しましょう。
その場合、差額は自分で支払うことになってしまいます。
忘れず、支払ってください。
新型コロナウイルスによる変更点
この制度も、新型コロナウイルスの影響を鑑みて、一部が変更されました。
その変更点について、一覧を表にしてみたので、確認してください。
変更点について
変更前 | 変更後 | |
対象者 | 離職・廃業後2年以内 | ・離職・廃業後2年以内 ・自分の責任や都合によらず、給与が減少して離職・廃業と同程度の状況にあること |
申請月の世帯収入合計が、基準額+家賃額以下であること | 申請月の翌月から収入額が下回ると証明できる資料があれば、前月から対象になる | |
就職活動要件 | ハローワークで月2回以上の職業相談、自治体で面接支援等月4回以上 | 電話対応可能、回数の減免の段階的緩和を経て、完全撤廃された |
年齢要件 | 申請日に65歳未満 | 年齢制限撤廃 |
支払い方法 | 賃貸人に直接支給 | クレジットカード払いの際は、受給者に支払うことも可能(支払い明細などの証明が必要) |
新型コロナウイルスの流行に伴い、いくつかの点が段階的に変更されています。
そのため、対象となる人も増えています。
特に、就職活動要件が撤廃されたことで、自営業者やフリーランスの人も対象になったことが大きいでしょう。
今後も、状況に応じて要件等は変更される可能性があります。
申込を考えている人は、まず相談して現在の要件が変わっていないかを確認したうえで申し込みましょう。
セーフティーネットとしての制度なので、必要がある場合は積極的に活用してください。
まとめ
住居確保給付金は、知らないという人も多いでしょう。
似たような名前の制度も多く、生活保護の住宅扶助などが基準となっていることから、混同されることもよくあります。
その違いを把握して、自分にとってどれが一番有用なのかを確認しましょう。
自分が要件を満たしているかどうかわからない時は、まず窓口で相談してみることをおすすめします。