生活保護制度というものを、聞いたことがあるでしょうか?
名前は聞いたことがある人も多いでしょうが、具体的にはどのような制度かということは知らない人がほとんどだと思います。
知っておくと、いざという時に役立つので、覚えておきましょう。
生活保護制度とは?
日本では、国民が健康で文化的な最低限度の生活を送れることを保障しています。
このことは、日本国憲法の25条に定められています。
そして、そのための制度が生活保護制度です。
この制度は、生活保護法に基づいて施行されています。
その第1条には、「生活に困窮する国民に対して、必要な保護を行って最低限度の生活を保障し、自立を助長することを目的とする」と書かれています。
この制度を利用している人に対して、働かずにお金をもらっているというイメージが持たれていることも多いでしょう。
しかし、実際には支給要件が厳しく定められていて、その結果働くことが難しいと認定された場合のみ、やむを得ず支給されるものなのです。
また、支給を受けていても無条件で受けられるわけではありません。
きちんと、生活保護をもらわなくても生活ができるように、自立を助長するための取り組みも行われています。
年金や、児童扶養手当をはじめとした各種手当をもらっている人が、生活保護を受けることもあります。
その場合は、各種の収入の合計金額が、厚生労働大臣の定める最低生活費を下回っているときに、不足分だけ支給されます。
働ける年齢で健康な人に対しては、自立を助長するために月に1度はケースワーカーが家庭訪問をして、就労指導も行っています。
ただし、就労を強制することはありません。
ハローワークとも連携して、求人検索や面接などを行うように指導され、その内容についても報告を求められます。
指導に従わない場合は、生活保護が停止されることもあり得ます。
生活保護を受けられるかどうかは、適用要件に適合するかどうかで決まります。
その調査は、保護を開始するときに調査されるので、虚偽の申請はしないように気を付けましょう。
適用要件
生活保護を受けるための要件は、5つあります。
この5つに適合しなければ、保護を受けることはできません。
どのような要件があるのか、解説します。
まず、生活保護は世帯ごとに行われます。
世帯の中で、一人だけ生活保護を受けるということはありません。
その世帯全体で、生活に困窮している場合のみ受けることができます。
その際は、全員で利用できる資産や能力をはじめ、すべてを最低限度の生活を維持するために使うことが前提です。
また、扶養義務がある人がいる場合、その扶養は保護より優先されます。
2つめが資産を活用するということですが、わかりやすいのが預貯金でしょう。
十分な額の預貯金があるなら、生活保護を受けることはできません。
まずは、それを使って生活しなくてはいけないのです。
同様に、現在住んでいる土地や家屋以外に、生活と関係のない土地家屋などがある場合は、それを売却などで処分して生活費にする必要があります。
生活している土地や家屋は、その対象外です。
3つめに、働くことができるなら働かなくてはいけません。
働きたくない、あるいはもっといい条件で働きたいと思っていても、それは要件に反することになります。
できない仕事をやれとは言われませんが、能力に応じて働く必要があります。
あれは無理、これは嫌だといっても、ケースワーカーが判断して働く能力があると判断されれば、生活保護は支給されません。
4つめに、この制度は最後の手段です。
その前に、他の制度などで給付を受けられる場合は、先にそちらを活用しなくてはいけません。
まず思い浮かぶのが、年金です。
それ以外にも、ケガや病気などには様々な手当などがあるでしょう。
そういったものを活用して、それでも最低限度の生活が難しいようなら、初めてこの制度を利用できるのです。
最後に、扶養義務についてです。
扶養義務がある人がいる場合や、親族などで援助をしてもらえる相手がいる場合は、まずそちらからの援助を受けてもらうことになります。
ただし、親族からの援助はあくまでもできればというだけで、正確には要件ではありません。
援助や扶養をしてもらう相手がいなければ、支給を受けられます。
また、援助をしてもらっても、収入が最低生活費より少ないようなら、その場合も保護の対象になります。
支給を受けられる要件は、このように定められています。
こうした要件に適合するかどうかは、支給を受ける前にきちんと調査されるので、ごまかすことはできないでしょう。
ちなみに、扶養に関しては可能かどうかを家族に連絡して確認します。
これを扶養照会というのですが、配偶者からのDVや親権者からの虐待などがある場合は、扶養照会を行いません。
扶養照会をされたくない場合は、相談する際に事情を話してみてください。
生活保護費
生活保護を受けることになると、生活保護費が支給されます。
しかし、それには大きく8つの種類があり、必要に応じて支給されることになります。
その種類について、解説します。
まずは、生活扶助です。
これには、普段から生活するのに必要な食費や光熱費、被服費などが含まれます。
暖房費なども含まれるので、冬季はその分も加算されます。
支給される金額には基準額があるのですが、特定の世帯では加算されることもあります。
加算される代表的な世帯は、母子家庭でしょう。
他にも、妊産婦や障害者、介護施設入所者、児童養育などの加算があります。
また、年末や入学など、特に出費が増える時期の扶助もあります。
次いで、住宅扶助です。
アパートなどの家賃に当たるのですが、これは実費が支給されます。
ただし、その範囲は決められているので、その中に収まる家賃の住居に住まなくてはいけないでしょう。
範囲は地域によって異なり、また世帯の人数によっても異なります。
それ以外に、畳の修理や豪雪地帯での雪囲いなど、住宅の維持のために特別な費用が掛かると判断された場合には、住宅維持費が支給されます。
小学生や中学生がいる世帯には、教育扶助が支給されます。
教材代や給食費、交通費などは実費で支給され、クラブ活動などの学習支援費は上限までの実費で支給されます。
それ以外に、基準額が固定で支給されることとなります。
ちなみに、修学旅行代はこれに含まれません。
その費用は、生活保護ではなく文部科学省の就学援助制度から支給されます。
混同しないように気を付けましょう。
介護サービスの利用が必要と認められた場合は、介護扶助が支給されます。
介護保険サービスを利用するためにかかる経費を補填するためのものですが、これは原則として現物給付となっています。
要するに、直接介護事業者に支払われるので、本人負担がないということです。
医療サービスの利用にかかる経費を負担する、医療補助も同様です。
こちらも現物負担、つまり医療機関へと直接支払われることになるので、本人の負担や一時支払いなどはありません。
ただし、出産に関しては出産扶助があります。
医療扶助とは別の種類として扱われ、分娩介助や検査、室料などの経費は上限の範囲内で実費の支給をされます。
生業扶助という種類もあります。
働くために、技能を身につけたり小規模事業を営んだりする際にかかる費用を補填するもので、上限までの実費が支給されます。
高校生に対する、学用品費や教材代なども、ここに含まれます。
基本額とは別に、教材代や交通費は実費で支給されますが、修学旅行代は文部科学省の少額給付金を受けるか、アルバイトで負担することになります。
また、仕事が決まって洋服や履物が必要な場合は、別途就職支度費が支給されます。
最後に、葬祭扶助です。
葬祭にかかる、葬祭料や読経料などの経費を負担するもので、上限までの範囲で実費が支給されます。
生活保護には、このような種類の扶助が含まれています。
このうち、必要と認められたものが支給されるのです。
利用する場合は、実費での支給と一定額の支給、負担なしの違いがあることに注意しましょう。
まとめ
生活保護制度がどのようなものか、お分かりいただけたでしょうか?
イメージと少し違った、という人もいると思います。
本当に困ったとき、最後の砦となるのがこの制度です。
不要な場合は利用しないほうがいいのですが、必要な時は迷わず福祉事務所に相談しましょう。