生活保護に対して、悪い印象を持っている人は少なくないでしょう。
極端になると、生活保護を受けている人が悪人のように思われることもあります。
しかし、実はその多くは誤解から生じている印象なのです。
どのような誤解があるのか、よくある例をみて本当のことを知っておきましょう。
デメリットに関する誤解
まずは、生活保護を受けることで受ける様々な制限について、よく誤解されることについて解説します。
様々な制限を受けるのは確かなのですが、極端な思い込みなども多いのです。
よく誤解されるのが、車を持つことができないという点です。
車は本体を購入するだけではなく、その維持にもかなりの費用がかかります。
所有している人ならわかるでしょうが、ガソリン代や車検代、保険代、タイヤの定期的な交換など、様々な費用がかかりますよね。
このように、様々な費用がかかる車を所持するのは、生活保護を受けていると原則的に禁止されます。
しかし、例外はあるのです。
それは、近くに公共交通手段がないなど、車がない状態で生活するのが困難と認められた場合です。
その場合は、車を所有することも認められます。
ただし、時折生活保護を受給しながらベンツやファミリーカーの新車など、高額な車に乗っている人がいるという誤解をしていることもあります。
所有を認められるのは必要最低限の車と決められているので、そのような高額な車に乗れることはまずありません。
ギャンブルや嗜好品などは絶対に禁止、と思われていることもあります。
確かに、お金の使い方については制限があり、時には指導を受けることもあります。
しかし、支給されたお金を上手にやりくりして、余裕があればタバコやお酒などの嗜好品の購入や、ギャンブルなどで遊ぶことは禁止されていません。
とはいえ、生活に困るほどギャンブルにのめりこんだり、昼間からお酒を飲んで外を出歩いていたりするなど、あまりにひどい状況だと指導が入ります。
指導によって改善が見られないようなら、生活保護の支給は停止してしまいます。
預貯金についても、全くできないという誤解があります。
しかし、生活保護を受ける前に預貯金で生活することが要件となっているだけで、やりくりしたうえでお金を貯めることは禁止されていません。
一応、上限の目安として最低生活費として定められた金額の6か月分までなら、お金をためておくことができます。
それ以上貯めた場合は、いったん生活保護が停止される可能性があります。
生活保護を受けると、それが近所に知られてしまうと心配している方も少なくありません。
しかし、生活保護の担当者は公務員なので、いちいちそれを吹聴することはありません。
もし、個人情報を漏らしてしまったら担当者が処罰されてしまいます。
知られるとしたら、周囲の人の憶測や世間話の中でうっかり話してしまうなど、行政とは関係のないところが出所となっている可能性が高いでしょう。
あえて気にせず生活していれば、そうそう知られることはありません。
生活保護の相談員やケースワーカーなど、担当者が男性しかいないと思っている方がなぜか多いのですが、それも間違いです。
男性のほうが多いのは確かですが、別に女性が担当するのを禁止しているわけではありません。
市町村によっては、女性が相談しやすいように女性相談員をきちんと配置しているところもあります。
近年は、女性相談員も増えているので、かなりの市町村に配置されているのではないでしょうか。
生活保護を受けるときの誤解
ここまでは、生活保護を受けているときに生じる誤解について解説しました。
ここからは、そもそも生活保護を受けられないのではないか、という誤解について解説します。
まず、預貯金が少しでもあると、生活保護を受けられないのではないか、という誤解があります。
確かに、預貯金があればそれを使って生活しなくてはいけない、という決まりはあります。
しかし、これは預貯金が少しでもあれば、受けられないということではありません。
最低生活費以上の預貯金がある場合は、まずそれを使って生活するように、ということなので、預貯金額が最低生活費を下回っていれば、生活保護は受けられます。
ただ、その場合は保有認容額というものがあります。
最低生活費から介助と医療の扶助を差し引いた金額の2分の1を超える金額が預貯金としてあれば、その分は保護費から差し引かれるのです。
また、土地や建物がある場合はそれを先に処分するという決まりがあることから、持ち家があると生活保護を受けられないと思っている方もいます。
これは、正確には生活に利用していない土地や建物は処分する、ということです。
つまり、持ち家はその対象外です。
ただし、処分したときの価値がその利用価値を大きく上回っているようなら、その家は手放す必要があります。
例えば、1億円で売れる家に住みながら生活保護を受けることはできません。
しかし、売ってもそれほど価値がないような家、つまりアパートを借りて家賃を支払うより安くすむような家なら、それをあえて手放す必要はないのです。
これは、土地の広さや建物の新しさ、立地条件などによって価値が大きく異なるので、一概に判断はできないでしょう。
それに関しては、相談してみるしかありません。
ちなみに、65歳以上の方であれば、社会福祉協議会で「要保護世帯向け不動産担保資金」というものを利用できます。
生活保護より先に、まずこちらを利用するように求められるでしょう。
働いていると、生活保護を受けられないという誤解もあります。
たとえ働いていても、その収入が最低生活費より少ないようなら、その差額分の支給を受けることができます。
最低生活費は、地域によって異なります。
現在の収入と、自分が住んでいる地域の最低生活費を確認して、収入が下回っているようなら相談してみましょう。
これは、働いた収入だけではなく、年金や受けられる手当などすべての収入を合わせた金額で判断されます。
年金を受給して働いていない人も、その支給額が最低生活費を下回っているようなら生活保護を受けることができます。
扶養義務者がいると、生活保護を受けられないという誤解もあります。
例えば、親族などから援助を受けたり、扶養してもらえたりするようならそちらを優先して受けるように決められているのですが、その援助は単に収入として考えるだけです。
たとえ、親族に大金持ちがいたとしても、扶養してもらうことができなければ生活保護を受けることはできます。
そちらに対して協力を要請することはあっても、強制ではありません。
また、子どもから親、あるいは兄弟間での扶養義務については、お互いに余裕がある範囲で仕送りをするなど、全面的な扶養義務とは違います。
余裕がない場合は、無理に扶養してもらう必要はないのです。
生活保護はあくまでも、最低生活費に足りない分の差額を支給する制度です。
収入や援助が、最低生活費には足りないようならその分は支給してもらうことができます。
また、生活できないほどぎりぎりの状態にならなくても、保護してもらうことはできるのです。
まとめ
生活保護は、いざというときのセーフティーネットとされています。
そのため、身近なものとは言い難いものなので、様々な憶測から誤解が生じることも少なくありません。
「こう聞いたけれど、自分は受給できないのかな?」と不安に思ったときは、自分で決めつけるのではなく、まず福祉事務所で相談してみることをおすすめします。