仕事を退職した時は、手当を受給できます。
しかし、それはどのくらいもらうことができるのでしょうか?
実は、失業手当の金額は人によって異なります。
なぜなら、その金額の決定には様々な要素が関係してくるからです。
具体的な、失業手当の受給金額について解説します。
失業手当の計算
失業手当の1日当たりの金額は、主に2つの要素で決定します。
それは、1日あたりの賃金と年齢です。
また、給付日数は年齢と雇用保険に加入していた期間、退職した理由でも違ってきます。
失業手当は、基本手当日額×給付日数の金額をもらうことができます。
つまり、受給金額は1日あたりの賃金と年齢、雇用保険の加入期間、退職理由の4つの要素で決まるということです。
具体的にはどのような計算をするのか、確認してみましょう。
手当の日額の計算
失業手当が日額いくらになるかというのは、離職した時点での年齢によって計算方法が異なります。
また、1日あたりの賃金も年齢によって、その上限が異なります。
まず、計算方法は年齢によって4つの段階に分けられています。
1.30歳から44歳
2.45歳から59歳
3.60歳から64歳
4.29歳以下あるいは65歳以上
です。
ただし、1日あたりの賃金の下限額は、2,500円です。
5,009円未満なら、年齢に関わらず日額の失業手当は8割をかけた金額になります。
つまり、2,000円から4,007円までとなるのです。
違いが生じるのは、1日あたり5,010円以上の時です。
まずは、30歳から44歳を例にとります。
段階としては、①12,330円から5,010円、②15,140円から12,331円となり、それ以上の場合も15,140円として計算します。
①の場合、計算式は以下の通りです。
y=0.8w-0.3{(w-5010)/7320}w
yは手当の日額、wは1日あたりの賃金を示しています。
例えば、1日あたり7,300円だとすれば、この式に当てはめて計算するとこのようになります。
y=0.8×7300-0.3{(7300-5010)/7320}×7300
計算結果は5,154円となるので、y(失業手当の日額)は5,154円です。
この段階では、59歳までと65歳以上では同じ計算式ですが、60歳から64歳の場合のみ金額の範囲と計算方法が異なります。
金額の範囲は、①が11,090円から5,010円となり、計算式はこのようになります。
y=0.8w-0.35{(w-5010)/6,080}w
y=0.05w+4436
この2つのうち、どちらか低い結果になる方が適用されるのです。
ちなみに、この場合は1日あたりの80%から45%の範囲で収まるようになっています。
29歳以下、あるいは65歳以上の場合、②が13,630円から12,331円で、手当の日額はその半分になります。
そして、それ以上はいくらでも金額は変わりません。
30歳から44歳の場合、②が15,140円から12,331円で、手当の日額はその半分です。
それ以上はいくらでも変わりません。
45歳から59歳の場合、②が16,670円から12,331円で、手当の日額はその半分です。
それ以上はいくらであっても変わりません。
60歳から64歳の場合、②が15,890円から11,091円になるのですが、手当の日額はその45%と、若干割合が異なるので注意してください。
それ以上なら、手当は7,150円として扱います。
このように、年齢によって計算式や割合、1日あたりの賃金の範囲や失業手当の日額の上限など、様々な違いがあります。
あくまでも、離職時の年齢で決まるので、間違えないようにしてください。
退職の理由と給付日数の違い
会社を退職した理由は、自分から退職したのか、会社によって退職させられたのかの2つに大きく分けられます。
この違いによって、失業手当をもらうことが出来る日数に大きな違いが生じるのです。
働いていた期間でも違いが生じます。
また、会社都合の場合は年齢によっても違いが生じるので、その違いを詳しく解説していきます。
まず、自分の意志で退職したケースでの給付日数は、以下の表の通りです。
・自己都合退職の給付日数
被保険者期間 | 1年未満 | 1年~10年 | 10年~20年 | 20年以上 |
全年齢共通 | 対象外 | 90日 | 120日 | 150日 |
自分の希望で退職した時は、被保険者期間が12ヶ月以上なければそもそも失業手当を受け取ることはできません。
また、ひと月の勤務日数が10日以下だと、カウントされないという点も覚えておいてください。
会社によって退職させられたケースでは、これに加えて年齢による違いも生じます。
また、最低限必要な被保険者期間は6ヶ月になります。
こちらも、表にして説明します。

2017年3月31日以前に離職した場合は、一部の日数が異なるので注意してください。
全体的に、自分から退職を申し出た場合と同様か、あるいは長くなっています。
さらに、自分で希望して退職すると、給付を受ける前に3カ月間の給付制限があるのですが、会社によって退職させられた場合はそれもありません。
こうしてみても、失業手当の面では会社の責任である方がかなり有利といえることが分かるでしょう。
会社に頼まれて、退職の理由を会社の責任から自分の希望にしてしまうと、損をすることを覚えておきましょう。
具体的にどのくらいの金額になるのか
では、需給金額は総額でいくらになるのか、いくつかの例を挙げて考えてみましょう。
ちなみに、1日あたりの賃金は退職する以前の6か月間の賃金総額を基に計算します。
まず、38歳で16年間働いていた会社を退職した場合の失業手当を計算してみます。
月あたりの賃金が250,000円だった場合、6か月分で1,500,000円です。
1月30日として計算するので、1日あたりの賃金は1,500,000/180日=8,333.33円です。
これを、上記の式に当てはめると、
y=0.8×8333.33-0.3{(8333.33-5010)/7320}8333.33
=5,531円となります。
会社によって退職させられたのであれば、給付日数は上記の表から、240日となることがわかります。
つまり、1日当たり5,531円をおよそ8カ月間貰うことができるのです。
1月あたりでは、5,531円×30日=165,930円を受け取れます。
全て受け取った場合は、5,531円×240日=1,327,440円を貰うことができるのです。
また、この失業手当を全て受け取る前にまた働き始めた場合は、残りを別の手当として受給できることもあります。
例えば、50日で仕事を見つけて働き始めました。
その場合、190日分の失業手当が残されています。
残った分は、どうなるでしょうか?
まず、190日分の失業手当は、5,531円×190日=1,050,890円です。
このときの給付率は7割になるので、1,106,200円×0.7=735,623円です。
この金額を、まとめて受け取ることができます。
では、同じ条件で自分の希望によって退職したとしたら、どうなるでしょうか?
その場合、日額は同じです。
しかし、手当をもらえる日数には大きく異なります。
もらえる日数は、半分になります。
そのため、失業手当も全体で、5,531円×120日=663,720円と半額になってしまうのです。
また、手当が残っているうちに働き始めた時に受け取れる金額も、大きく変化します。
同じく50日で働き始めた場合、残りの日数は70日です。
残った失業手当は、5,531円×70日=387,170円です。
さらに、このときは6割の給付率になってしまいます。
そうなると、手当として実際に受け取れるのは387,170円×0.6=232,302円です。
先程の例の、3割程度しかありません。
ちなみに、現在は新型コロナウイルス感染症の影響を考えて、一部の人は手当をもらえる日数が延長されているので、その点もチェックしておきましょう。
対象となるのは、令和2年6月12日以降まで失業手当をもらう人のうち、離職日やその他の条件に該当している人です。
離職日が令和2年4月7日以前なら、それ以外の条件はありません。
同年4月8日から5月25日に離職した人の場合は、会社が倒産したり解雇されたりした人、つまり会社によって退職させられたか、特に決められた理由での退職に該当すると適用されます。
それ以降に離職した場合は、会社の責任で退職したか特に決められた理由での退職のうち、新型コロナウイルスの影響で離職したと判断された人が該当します。
これは、地域に関係なく日付によって、全国一律で同じように扱われます。
これに当てはまった場合、給付日数は60日延長されます。
ただし、給付日数が元々長い一部の人は、30日だけ延長されます。
また、仕事を探すのに積極的ではないと判断された場合は、対象から外されてしまうこともあるので注意してください。
この特別対応に関しては、現在のところ具体的な終了時期は示されていません。
その分、急に終わることも考えられるので、該当する可能性がある時はまず確認してみましょう。
まとめ
失業手当は、人によって基本的な金額や受け取れる日数、計算する時の割合などが異なるため、一概にいくらとは言えません。しかし、ある程度の金額は受け取れるので失業時には頼りにする人も多いでしょう。
退職する前に、自分がいくらの手当てを何日間受け取れるのか、一度確認しておいた方が良いでしょう。年齢によっても変わるので、誕生日が近い場合は数日で大きな違いになることもあります。そういった点も、確認してみてください。