仕事を退職すると、失業保険に加入していれば一定の期間は国から手当をもらうことができます。
その金額は意外と多いので、すべて受給してから働かないともったいない、と思う人もいるでしょう。
しかし、仕事を早く決めると再就職手当が支給されるので、すべて受け取るまで待つほうがもったいないかもしれません。
ここでは、その手当について徹底的に説明します。
なぜ、働くことで手当てがもらえるのか
仕事が決まるまでの間は、国から失業手当がもらえます。
その期間は、人によって異なるのですが、すべてもらうとそれなりの金額になります。
求職中と認定されるだけで、もらうことができるのです。
例えば、30歳未満の人が月額20万円の仕事を自己都合で退職したとき、90日間の給付日数があったとしたら、総計で439,200円もらうことができます。
働かなくても、3か月間はそれまでの収入の7割強が失業手当として支給されることになるので、すべて受け取ってから働こう、と思う人も少なくないでしょう。
しかし、それは本当に正しい選択でしょうか?
実は失業手当が残っているうちに新しい仕事を決めると、国から、おめでとうという意味を込めて支給される手当もあるのです。
なぜ、そのような手当てがあるのでしょうか?
国としては、なるべくなら早く働いてほしいと思っています。
なぜなら、働いてもらうことで国には税金が入ってくるからです。
しかし、働かなくても失業手当がもらえるなら、そう急いで働かなくてもいいか、と考えてしまう人もいるでしょう。
求職活動をしていないともらえないのですが、仕事を探す活動をある程度していれば問題なくもらえるので、そのような姿勢でいる人も少なくはないでしょう。
そうなると、国としては困ってしまいます。
仕事が見つかるまでの生活を支えるための手当なのに、かえって再び働き始めることを妨げてしまっています。
そこで、失業手当が残っているうちに仕事を決めた人には、そのお祝いの意味でも、残った失業手当の一部を再就職手当として支給しています。
働いて給料をもらったうえで、さらにこの手当も受け取ることができるので、単に失業手当をもらっているよりも得をするのではないでしょうか?
受け取るための要件は?
この手当は、どのような要件を満たす必要があるのでしょうか?
全部で8つありますが、その内容を順に説明しましょう。
最もわかりやすいのが、会社が雇用保険に加入していなくてはいけないということです。
早ければ早い方がいいとはいえ、あまり早すぎてももらえません。
失業してから、ハローワークで手続きをすると受給資格の決定をされるのですが、その前から内定をもらっている場合は対象外となります。
また、手続きの後に待期期間があるのですが、それを過ぎる前に就職してしまうとやはり対象外になります。
きちんと休職していることを認められてから就職しなければ、対象にならないのです。
先ほどもいいましたが、給付期間の3分の1以上が残っている状態で再就職しなくてはいけません。
残日数が足りないと、手当を受け取ることができません。
就職先ですが、どこでもいいわけではありません。
退職した会社とは関係のない会社に就職した場合に限られます。
前の会社の子会社や、関係が深い会社に再就職した場合は、対象外になってしまうので注意しましょう。
また、就職してから1年を超えて働ける見込みがなくてはいけません。
半年の契約で、契約更新がないような仕事だと、もらうことができないので注意しましょう。
自己都合で退職している場合は、3か月の給付制限があります。
その制限がなくなるまで待たずに就職しても、手当はもらえます。
ただし、最初の1か月は仕事の見つけ方が限られます。
ハローワークか、もしくは人材紹介会社から紹介を受けて就職した場合のみ、となるのです。
そして、過去3年間で同じような手当を受け取ったことがない、という要件もあります。
以前、再就職手当や常用就職支度手当を受給したことがある人は、それが3年以内ではないか確認しておきましょう。
このような決まりがあり、それをすべて満たしていないともらうことはできません。
一見複雑に見えるかもしれませんが、期間による制限以外はほとんどの人が問題はないでしょう。
もらわないとどうなる?
もらうには、申請が必要です。
ということは、何もしないと当然もらえないのです。
また、申請はしたものの日数の不足などによって、不支給になる人もいるでしょう。
まず、申請は再就職から1か月以内であれば問題ありません。
しかし、申請期間自体は1か月なのですが、実は申請の有効期限としては2年間あるのです。
事前にハローワークへと連絡をすれば、期間内なら問題ありません。
もし、申請が面倒という理由からもらわないでおいても、ペナルティーはありません。
単にもらえないというだけですが、もらわないことで利点となることもあります。
これは、日数が不足してもらえなかった場合でも同様です。
何らかの理由で早期に退職してしまった場合は、失業手当をもらえません。
自己都合なら12ヵ月、会社都合でも6ヵ月は雇用保険の被保険者となる必要があるからです。
その場合、通常なら何ももらえないのですが、申請していなければ以前に残った手当の受け取りを再開することができます。
例えば、50日分残ったまま再就職していれば、その分をもらえるのです。
しかし、手当をもらっても、次の仕事を早期に退職した時に全くもらえないわけではありません。
失業手当と再就職手当との差額分は、再びもらうことができます。
80日を残した状態で再就職をして、7割の給付率で手当を受け取ったとしましょう。
その会社を4か月で退職してしまったときは、残っていた80日分から7割を引いた3割分、つまり24日分までもらえます。
申請しないまま、次の仕事で必要な日数を勤務した場合、以前の分はリセットされることになります。
しかし、仕事の内容などを吟味せずに急いで就職先を決めた場合は、万が一の保険として残したままにしておく、という選択肢もあるでしょう。
ただ、受け取った場合でも全くもらえないわけではない、ということを覚えておいてください。
万が一の保険であれば、残っている分だけでも問題ないかもしれません。
就業促進定着手当も覚えておこう
再就職手当をもらった人は、また別の手当も得られることがあります。
それが、就業促進定着手当です。
この手当についても、同時に覚えておいた方がいいでしょう。
この手当は、再就職をするときに手当を受け取った人のうち、6か月以上続けてそこで働いている人が対象です。
つまり、最低でも6か月経過していないと申請できません。
そして、その間の1日当たりの賃金が、以前の仕事よりも低くなっている人が利用できます。
その差額分を、手当としてもらうことができるのです。
ただし、賃金日額は計算される際に範囲が決まっています。
下限額は2,500円ですが、上限額は年齢によって異なります。
その範囲内の金額にして計算し、差額を支給するのです。
また、支給される金額そのものの上限もあります。
それは、手当としてもらった分の残りです。
先ほども出てきた、失業保険との差額分を上限として、下がった分の賃金を受け取ることができるのです。
申請には、6か月間の出勤簿の写しと給与明細などが必要です。
それに、仕事が決まったときにもらっている申請書と受給資格者証も用意します。
必要な書類を揃えたら、ハローワークに提出してください。
提出の方法は、持参するか郵送のどちらかを選べます。
提出する書類は、折り曲げないように注意してください。
申請は、6か月経過してから2か月が期限です。
その書類を提出してから、支給するかどうかの審査が行われます。
その審査には、だいたい2週間から1か月ほどかかります。
それが終わって、支給が決定されれば1週間ほどで振り込まれます。
この手当も、もらわなかったからといってペナルティーはないので、要件を満たしていても申請するかどうかは自由です。
しかし、半年が経過してその仕事に問題がないようなら、せっかくなのでもらった方がいいでしょう。
このように、条件次第では様々な手当てがあります。
色々と覚えておくと、得をすることもあるので、覚えておきましょう。
まとめ
失業手当をもらいきるまで、仕事を決めないというのはとてももったいないことです。
それよりも、早期に仕事を決めて給料をもらい、それに加えて再就職手当を受け取ったほうが、得をすることが多いでしょう。
手当を受け取れるように、早い段階での再就職を目指しましょう。